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2019.09.18

せせらぎの風呂 – 山と渓谷と廃温泉郷

廃墟の情報

せせらぎの風呂
温泉施設


廢墟レポート vol.144:せせらぎの風呂 Hot spring in brook

こんにちはtamuraです!

やってきたのは中国地方の深い深い山の中にある小さな谷間にある温泉地の廃墟です。

このあたりは車通りも少なく…というか土日に訪れたというのに一台もすれ違わなかったような道の途中で発見しました。

最初は足湯でもあったら入っていこうかな~なんて思っていましたが、入ってみるとどうやら廃墟でした。

小さな渓谷にひっそりとたたずむ温泉地。

廃墟の事をジブリで例えるのはすごく恥ずかしいという風潮がありますが、ここはパッと見ジブリの世界観を彷彿とさせる雰囲気を持っていました。

「千と千尋の神隠しの最初のトンネルに入っていくドキドキとしたシーン」、「もののけ姫のたたら場のような」といった、昔の雰囲気を持った何かが存在しそう、誰か普通じゃない存在が居そうといった幻想を抱きます。

北海道大学の教授による「ジブリ映画の環境思想 日本的風土に関わる考察」という面白い論文があって、そこに宮崎駿のアニミズム意識について書かれています。アニミズムとは自然会のそれぞれのものに固有の霊が宿るという、人が潜在的にもっている原始的宗教観の一つですが、「多くの日本人の中には自分たちの国の一番奥に人が足を踏み入れてはいけない非常に清浄な所があって、そこには豊な水が流れ出て、深い森を守っているのだと信じている心です」と宮崎駿が述べていて、やはり廃墟の魅力にも通ずる部分があると感じました。

結果、ここは温泉地跡でという結果は別として、最初のこの風景を見たときは何やらただならぬ神秘性を感じました。そもそも予備知識もなかったので、ここは一体何なんだろう、という不気味さと好奇心との闘いでした。

こういった僕の心境は、人間ではない何か特別な存在があるのではないか、いやそういう存在があってほしいという幻想であり、一種の原始的な宗教感が心のどこかに根付いている現れでしょう。

人間がそういった物や自然に宿る何かに対する畏怖というのは、生まれながらに持っていて、血を辿って脈々と受け継がれてきた宗教観ですが、1980年代になりジブリ映画の作品が生まれ、古き良き時代の美化されたイメージ像を世間に広く植え付けた事によって一般化し、特に都会で幼少期を過ごした方にとっては抽象的だった過去への憧景が具体的な感覚となったのではないでしょうか。

「ジブリみたい」という言葉は、とても簡単で安直なものに思えますが、寓意的でかつそれはその人が”何か”を確実に感じ取っている証拠であり、100を説明しなくとも通じる魔法の言葉なのです。説明しなくても分かるでしょう?という相手に暗示させる美しい日本の国民性も含まれていると思います。

※もちろん、廃墟巡りといっても人によってスタンスは違いますし、廃墟の中でも数多くのジャンルがある為、全てがジブリみたいという魔法の言葉でまとめられる訳ではありません。

さて、言い訳が長すぎたので本編に戻ります笑

道に落ちていた提灯を見て、ここが温泉地と知る。

この橋を渡ったら…もう戻って来れないとか来れるとか来れないとか。

わたってしまった。。。

そしてその先にボロボロのゲートが。

中に入ってみると、趣のある温泉地らしい和風の建物やコテージが並んでいました。

まどにかかれていたせせらぎの風呂というのがこの場所ピッタリの言葉でした。

料金所。

割と新しい自動販売機がぽつり。ペットボトルはなぜそんな事になっているの?

奥へ奥へ…もう戻れない…深みにはまってゆく…。

お食事処。鍵が閉まっていました。

女風呂。

すごくいい感じのお風呂じゃないですか!これはぜひ現役の時に入りたかった…。

通路をはさんで露天風呂へ。露天風呂は鍵がしまっていました。

色んなタイプの浴槽があって、小さいながらもバラエティーに富んだ立派な温泉施設だった事が分かります。

脱衣所に向かう途中で見つけた脱ぎ捨てられた洋服。これはきっと、お風呂が待てなかったのかな。

温泉郷の中にはコテージがいくつかあり、宿泊も可能だったようです。

避暑地のような所にあるので、お盆なんかここでのんびり過ごしてみたかった。

閉業したのはここ10年ほど?で、冬季は雪深いので閉鎖されていたようです。

一度、リニューアル?かなにかで営業停止していたようですが、二度目の営業停止からそのまま廃墟になったようです。

感想・まとめ

まるで異世界にもぐりこんだような魅力たっぷりの温泉廃墟でした。タイトルは温泉郷としていますが、全体がまるまる一つの施設で、温泉やコテージ、食事処などがあるこじんまりとした所でした。

営業当時から知る人ぞ知る温泉地だったようで、閉業に関しては惜しむ声がネットに投稿されていました。


山と終末旅の管理人について
たむ - tamura -
平成3年生まれ、京都に住んでいます。登山や、夜景、人の少ない観光地へ行って、現実から逃げ、非日常的な体験をする事が好きです。

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