古都コトイメージSmart
2018.09.18

王朝ホテル - ルネサンス調の豪華内装の廃ホテル

この廃墟について

王朝ホテルとは、石川県に存在した旅館。1954年に創業。11階建て客室数88数という大型旅館で、1999年に大幅改装され王朝文化をイメージした煌びやかな空間と加賀の文化をイメージした和風空間が調和したゴージャスな佇まいとなった。

不景気によって旅行客が伸び悩み、2010年に負債総額20億円を抱え破産。内外装共に老朽化が進み近隣住民からの不安の声もあり、2020年に解体された。

廢墟レポート vol.102:王朝ホテル Dynasty Hotel

こんにちはtamuraです。

とある地方のとある廃ホテルにやってきました。豪華な内装で廃墟と言えどまだきれいな見た目をしていますが、このホテルの歴史は古く高度経済成長期の始まりの頃まで遡ります。

終戦を迎え、復興に向かった日本は、世界に例のない経済成長を成し遂げました。そんな好景気と同時に開業したのがこのホテルです。

前職から全く違う旅館業という職に目をつけた女将さんは、右も左もわからない中手探りで経営を始めたのだといいます。その後レジャーブームの流れにのり業績は伸び、後に大きなホテルへと生まれ変わりました。

きっと女将さんはどうすればお客さんが気に入ってくれるのか、唯一無二のホテルを作りたい。そんな気持ちで経営していたのだと思います。ルネサンス様式の大会場に温泉、キラキラと輝くラウンジ、そして中世のお城のような内装のようなクラブなどなど、他のホテルにはないまるで異国に来たかのような豪華な造りの内装が名物となっていました。

しかし景気低迷の影響で利用客が伸び悩みピーク時の3分の1にまで減少、戦後の好景気から半世紀を駆け抜けたこの豪華ホテルも結果多額の負債を抱えやむなく倒産に至りました。

美術や絵画が好きな人でも、ここは何をモデルにしてるのだろうと考えながら見てみると面白いと思います。

手前の絵画は、新古典主義の時代で有名なルイ・ダヴィッドの「ヴィーナスと三美神に武器を取り上げられるマルス」です。

新古典主義は、古代ギリシャ美術を模範としたため、この絵もギリシャ神話がモデルになっています。

武器を取り上げられる軍神マルス、エロス(キューピッド/アフロディテのアトリビュート)に靴まで取られそうになってる所が面白い作品ですね!

絵画について超簡単に説明させてもらうと、ギリシャ神話の中のヴィーナスの浮気シーンを書いた絵画です。ヴィーナスには自分で選んだ不細工な夫が居たのですが浮気性でした。言い寄られてるマルス(♂のマークのモデル)が武装解除するシーンです。

面白いのは、このロビーはロココ調にまとめられてあるのですが、新古典主義というのはバロックやロココのような華やかさに対抗するように生まれた世代なので、ロココと新古典主義の対比が面白いロビーエリアとなっています。

このように中世ヨーロッパの絵画や、建築をモチーフとした豪華内装のホテルとなっています。

まるでお城の中のような?電話ボックスもなんだかモダンで洒落ていますね~!

時期はパンフレットにはルネサンス調と書いていますが、様々な年代の西洋美術を取り入れており、定まったジャンルはありません。

なので、様々な年代、画家、作家、●●風と取り入れた美術館のようなホテルと思ってもらえればいいと思います。

装飾敵表現が特徴のロココにしてはシンプルですが、柱のちょこっとした所に可愛らしいアクセントがあります。

そしてホテルの大きい事大きい事。早速今どこにいるのかわからなくなってきました。

一気に内装が和風に、このホテルはコロコロ様式が変わる。

迷って到達した宴会場。なんだか日本の寺院のような雰囲気。

階段を上りさがりで汗がダラダラ。

最上階の浴場の更衣室。さっきまでゴリゴリの和風がはたまたゴシック調に様変わり。

お風呂場に向かうステンドグラスはわりといい感じ。

大展望風呂。最上階なので景色が抜群。営業中に入りたいほどリッチな雰囲気。神殿のお風呂って感じですね。

たぶん、ギリシャ神殿を意識してる気がします。パルテノン神殿でしょうか。

なので彫刻もありますし、初期キリスト教美術の年代をモデルにしてるのかもしれません。

クラシック期かヘレニズム期にあたるんでしょうか、でも年代が統一されてるとは限りませんね。なんだろう。

そもそも、ステンドグラスが主流になったのはゴシック時代なので、ゴシック以降と古代ギリシャ、そして大きな窓(モダニズム)のコントラストが良くマッチしています。

ずーっと曇りだったのに、この写真を取っている数分だけ晴れ間が出てきました!神様ありがとう。

ステンドグラス風の窓と、アクセントになる彫刻が美しいですね。

彫刻はホタテ貝の貝殻はヴィーナスのアトリビュートなので、ヴィーナスの生まれた瞬間を表しているのかな?

この浴槽が地中海を表しているのかもしれない…、そういう風に見てみると面白いですね。

さきほどの展望風呂の横には普通の浴槽も。

ここまで年代をバラバラにするのなら、せっかくお風呂場にタイルを使っているのでビザンチンのようなモザイク画を取り入れたら良かったのに!

再び迷う。迷いすぎて休憩中になんでもない客室を撮影。汗ダラダラ。

ぱっと見とてもキレイですが、実際に見るとホコリの香りが漂い、一つ一つの備品がやっぱり年代を感じます。

客室にあったこのホテルの様式についての説明。

まさに西洋文化と和の文化の融合したホテルですね。

営業当時は今よりもっと王朝っぽい世界観が広がっていたようです。

こちらは和室のVIPルーム。石畳付き。

こちらは別館の屋上。こちらも浴場の入り口です。

浴場だからでしょうか、右上にアルマ=タデマのテピダリウムの絵画があります。

テピダリウムとは、古代ローマにあった浴場の施設の一つ。休憩したり体を乾かしたりする場所です。

中央の絵画、ギュスターヴ・クールベの「眠り」も19世紀フランス。ここの女将さんはフランスが好きだったのかもしれません。

うぉー!ベルサイユ宮殿のマルスの間のような素敵な更衣室です。天井が剥がれて鉄筋むき出しになってるのが残念です。雨漏りで変な匂いがただよっていました。

19世紀フランスの画家、シャセリオーの「テピダリウム」の絵画が描かれています。テピダリウムは分かるんですが、左はなんだかよく分かりませんね…すごく美しい絵画ですが知りません…。

孔雀が写ってるあたり、たぶんヘラだと思うので、その後ろの二人描かれているという事は三美神で、それなら左側の男が持ってる丸い物体はたぶんリンゴっぽい?、となるとパリスの審判が題材のような気がするのですが、色褪せて汚いのでそれ以外のヒントがありません…。絵画についた手形はヒントなのかいたずらなのか?

体格が少し下半身を強調してるように見えますし、マニエリスム期っぽいような気もしますね。不可解な点も多い気がする…。

ゴシック調の華やかなタイルです。

お風呂場に入ると、急に世代が変わり、ギリシャ神殿のような雰囲気です。

湯舟には馬や男性の彫刻が。

ローマのトレヴィの泉がモデル?

よく見ると馬の表情が可愛らしい…!

下の部分は温泉の成分からか塗装が剥げてしまっています。

さぁもう満足…帰ろうと思ったら、一階にこんな大広間が!見落とす所だった!

素敵なシャンデリアと、ベルサイユ宮殿やルーブル美術館のような天井画があります。

会議室や食事の間などいろいろな用途で使用されていた大広間。

二つ並べられたソファーの後ろには先ほど屋上の更衣室にあったシャセリオーの「テピダリウム」の絵画が描かれています。

素敵なシャンデリアと天井画。

その隣の部屋は、素敵な部屋ですがなぜか卓球台。

あー、温泉入った後に卓球とかする"あの”部屋だったんだね!

こちらの一番奥の真ん中にある絵画はビーナスで最も有名な絵画と言えるんじゃないでしょうか?

ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」です。

左右対称になっているので違和感ありますね、ゼピュロスとクロリスがバラをまいている様子をセットでバランスよく入れたかったのだと思います。

こちらはロビーの横にあったラウンジ跡。

鏡張りになっているので、ディスコライトが輝いていた当時は素敵な空間だったんだろうなぁ。

ディスコの横にはこじんまりとしたクラブが。

プライベートクラブといい、中世のお城を彷彿させる重厚感のある空間でした。

調理室もステンドグラス風で鮮やかで優しい光が差し込んでいました。

感想・まとめ

中世ヨーロッパや、当時、古代ローマ、ギリシャの復興の様子をモデルとした廃ホテルでした。掲載されている作品はルネサンスだけではなく年代も様々のものでしたが、建物は15~6世紀のルネサンスからバロック~ロココ、または古代ローマやギリシャの復古調(当時)の復古調、そして絵画は年代は様々だがギリシャ神話をテーマとして絞られており、全体的なテーマとしてはルネサンス風(15,6世紀を軸とした復興運動時のヨーロッパの世界観)と言えると思います。

生き残りをかけたホテル経営は、お客がどう納得してもらえるのかを必死に考えると思います。このホテルはルネッサンス風内装を強みに営業していたようですが、口コミや地域の観光客数に対する集客数、また観光地自体の衰退など様々な理由が重なり閉業に至ってしまったのだと思います。これほどの規模で親子二代に渡って経営されてきた歴史のあるホテルが、廃墟になるというのは栄枯盛衰を目の当たりにしたような気分になりました。

たまきはる 命は知らず 松が枝を 結ぶ心は 長くとぞ思ふ

奈良時代の歌人「大伴家持」が読んだこの詩がこのホテル名の由来だそうです。「人の命はいつ終わるかわからない、こうして松の枝を結ぶのは、少しでも長く生きていたいと思うからなんだよ」という意味。

松の森にできたといわれているこのホテルとかけているのです。いつまでも営業しつづけ、お客を待っていたかったんだろうな…。廃墟となったこの姿を見て、その詩を詠むと胸が熱くなりました。

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山と終末旅の管理人について
たむ - tamura -
平成3年生まれ、京都に住んでいます。登山や、夜景、人の少ない観光地へ行って、現実から逃げ、非日常的な体験をする事が好きです。

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