古都コトイメージSmart

2016.03.27

稲取隔離病棟 – 森の中のオレンジ廃病院


稲取隔離病棟

廃墟の情報

稲取隔離病棟
廃墟病院
場所 静岡県
建設 1958
廃墟化 1978


廢墟レポート vol.43:稲取隔離病棟 Inatori Clinic Isolation ward


静岡県の廃友人と伊豆半島にやってきました。

天気も良く海が綺麗で、春先のあたたかな風を感じながら海沿いの道を走ります。ナンバープレートも関東のものが多く、あぁ東のほうに来たんやなと実感します。世田谷ナンバーと杉並ナンバー初めてみました。

伊豆というと熱海などが関東圏のリゾート地として有名ですが、南の方は今や人気も少なくバブル期に建てられたホテルなどの廃墟が数多く存在します。

今回は稲取隔離病棟(東伊豆町隔離病舎)という場所にやってきました。外観を見てびっくり。ボロッボロで中入れるんかな?と不安になりました。


この病院は、昭和33年に開院した主に結核、赤痢患者を主要とした感染症患者の隔離病舎です。

この病院のそばを通る旧国道が、昭和53年1月の伊豆大島沖地震により被害を受け新国道が開通しました。旧国道とつながっていたこの病院も地震災害で営業停止、4年後に熱海の病院と統合され、この建物は取り壊される事なく廃墟となりました。


思い切って中へ入ってみる。

今にも崩れてきそう…。ヘルメット着用して散策します。


病院の廃墟ですが、怖いという感じはなく、神秘的な雰囲気が漂っています。

この廃墟は、この記事を書く何年も前と、その後にも訪れていますが、廃墟に何度も訪れるという事は時が止まっている廃墟にも時間が流れている事を再認識します。

そんなの時間が流れた結果廃墟になったのだから当たり前じゃないかという可笑しな話なのですが、廃墟は、閉業時のまま残された建物や残留物が残され物事の経過が止まった場所であるという事です。勿論、我に返ればそこにも時間は流れています。

廃墟をめぐる人の中には、崩壊が進んだ廃墟の事を「旬の過ぎた廃墟」と例える方がいます。私もこの廃墟は”廃墟”として旬は過ぎたのか?と問われると正直な所、ほんの少し過ぎているかなと感じます。しかしそれは建物を空間で捉えた時の話です。

建築学的に建物は時間の中に存在するものという考え方があります。建物は設計~崩壊し消え去る寸前まで、いつまでも完成しないし、いつまでも壊れていくものであるという事です。西洋的な考え方ですね。

この壊れていく姿が味であり、美しさですが、日本は木造文化なので、半永久的に残るレンガや石造りの家の基礎とは違い、木造の場合はそれらに対して時間の経過による変化が大きいでしょう。

たとえ美しい石造りでも風化によって最後(数千~万年後?)石ころや砂となった残骸を見ても美しいと感じないように、木造でも倒壊して腐りきった建物を美しいと言う人は少ないと思います。崩壊する姿を美しいと捉える事に共通点はあるにせよ、その崩壊するスパンが短いからこそ、日本の廃墟文化の中に旬という言葉が生まれたと思います。


廃墟マニアの定義する廃墟のうちには入るものの、美しいという観点からすると、この建物はすでにその段階を過ぎているかもしれません。私はこの医院をまだ美しいと思えるので、もちろん人によると思います。その度合いが「廃墟の旬」です。

廃墟の旬や美しさというのは複雑な要因が交錯し、建物のデザインやコンクリート造なのかはたまた木造なのかレンガなのか。また人の感性や視点によっても違う為、一言で例える事は出来ませんが、僕が考える廃墟とは、自然と拮抗せず、重なりあうように時間を共有し、過去を垣間見れるだけの断片を残すものと定義し、それらに当てはまるような物件を巡っています。その中でも美しい廃墟の条件として、建築的特徴を残している事を重要視しています。


この崩壊しきった廃墟には、人生と肉体の行方を鏡面のように映し出しているように思えます。

設計~建築は人が生まれる瞬間、建物に資材が運び込まれ役割(仕事)を果たすようになります。やがて役目を終え、放置され建物が死にます。人という体液が廻らなくなった建物は、急速に老朽化が進みます。

建物の死後は、誇りが溜まりカビが蔓延し、カビや湿気などから壁や床が壊れ始め、崩壊が進み窓が割れ、ガラスや破片が外に跳び散り、雨風による損傷が悪化し、柱や少し残った天井や壁だけになり、それも時間の経過で柱が折れて建物の原型をなくし、やがて土に還ります。

役割を終えた廃墟の時間の経過を比べていくと、まるで九相図を眺めているように感じます。


藁のベッドある!すごい!長崎の蛤診療所に憧れていたのですが解体してしまって、藁ベッド撮影欲を満たせずにいたのですが、ここにきて撮影する事ができましたラッキー。

窓からオレンジ(?)が見えて窓がオレンジのまだら模様になっていました。素敵。


窓の崩壊具合や椅子の朽ち方が微妙ですね~。

自然と共に共存する廃墟という感じで、心惹かれる部屋です。


崩壊の時が近づいてる気がする。


壁もはがれ外の竹林と同化していってる病室。


トイレ


なんの部屋でしょう。洗面台などもあります。


椅子と洗面台と窓枠。


蛇口がちょっと変わってるレトロな形してます。

感想・まとめ

崩壊の激しい物件でしたが、中は見どころがありました。まさに今崩壊している様を楽しめたと思います。ただ本当に倒壊途中といった感じで危険な所ですので、決して当サイトの真似はしないようにしてください。

山と終末旅の管理人について
たむ - tamura -
平成3年生まれ、京都に住んでいます。登山や、夜景、人の少ない観光地へ行って、現実から逃げ、非日常的な体験をする事が好きです。

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