古都コトイメージSmart

2018.06.03

旧摺子発電所 – 湖上の発電所

摺子発電所

廃墟の情報

摺子発電所
発電所廃墟
場所 奈良県
建設 1929
廃墟化 1965


廢墟レポート vol.24:旧摺子発電所 Suriko Power Station

こんにちはtamuraです!

本日やってきたのは奈良県南部にある七色ダムが形成する七色貯水池という所。日本屈指の秘境である大峰山脈、台高山脈に挟まれアクセスはとても大変でした。

ここに秘密のスポット旧摺子発電所(通称:湖上の発電所)と呼ばれる湖に沈んだ発電所の廃墟が存在します。

まずは動画をご覧ください!

発電所周囲は釣りポイントであり、この辺りの釣り人の中では有名ですが、周囲を走る国道からは見えない為、廃墟マニアがぞろぞろと訪れるようになったのはここ最近の事です。

今回の物件は陸続きにはなっていない完全に水没した建物となる為、レンタルボートを借りる必要があります。我々がお世話になったのはTs-ONというレンタルボート屋で、Ts-ONから発電所までは約1.2km、時間にして15分ほどのクルーズになります。

※2018年06月現在、大阪北部地震を機に黄色テープが貼られ、摺子発電所は立ち入り禁止となりました。

※この記事は2018年散策時の写真と、2015年散策時の写真が混同しています。

ドゥルルルル…

朝の寒涼しい風を身に受けながら我々は船を進める。2馬力のひ弱なエンジンボートの音だけが周囲に響き渡る。

まだ人が少ない朝の湖は鏡面世界。湖面に写るもう一つの世界に扮した深い水の中に、ふと気を抜けば吸い込まれそうな恐怖と緊張感があった。

写真に写ってるのは同行者の静岡夜景NIGHTWALK管理人の権蔵さん。夜景の友であり山友であり、なぜか廃墟を巡る事もある。

奥に見える発電所を見つけ会話が消え体が勝手にカメラを探していた。

アクセルを握る僕の手も力が入り汗ばんできた。ふかしたい所だが焦りは禁物。この手の小型エンジンは長時間高速回転するとすぐオーバーヒートしてしまうので、急ぎたい所をじっとスローで向かう。

我々が廃墟に向かうときはいつだって冒険なのだ。好奇心と恐怖心、ドキドキと胸が高鳴る。

近くまで来るとスロットルを弱めた。しばし2人共、無言のままシャッターを切り続ける…。

無音の世界にこの景色。ここはなんなんだ?迫力に圧倒されるというか、やはり湖に建物が沈みそのまま残っているという不思議さに感動する。

発電所は、太平洋戦争以前の日本における大手電力会社の宇治川電気株式会社(現:関西電力)によって大正6年に起案され、昭和4年に着工、昭和6年着工されました。

その後、七色ダム建設により昭和40年に水没となりました。

インターネットで写真で見た印象とは違い、実際見てみると湖面から2階建てほどの高さはあるので近寄るとやっぱり大きい。

湖から顔をだしその腐食された質感の美しさや、水面下にうっすら見える下階部分のロマン。そしていまから侵入する期待と、無事帰れるのかという恐怖で、何とも言えない緊張感があります。

ここで作られた電気は、京都・大阪方面、三重尾鷲方面へとそれぞれ送電されていたそうです。

湖面から反射した太陽光がゆらゆらと天井になびく…。

建物を一周し着岸。

ちょうどいい入り口があり、沢山の人が訪れるからかロープまでありました。

中へ一歩足を踏み入れると、湖の上に立ってるとは思えないほど大きな部屋があります。

地面はじめっとしており、窓際の光のあたるエリアには苔が生えています。

侵入したのは建物三階部分。変圧室だそうです。2階、1階が水中でどうなっているのか考えるだけでゾクゾクとしますね。

下は何か設置していた跡が。ここはなんの部屋だったのでしょう。

廃墟の中で芽生える新しい命。

入り口周囲の風景。

背面は陸地まで10mほどと近い。

窓枠の影ってなんかいいですよね。

変電室と発電機室を遮る壁の窓。上にはまだ木枠が残っていますが、ほとんどは剥がれ落ちてコンクリートのみになっています。

入ってすぐの部屋から、水没した発電機室。

吹き抜けの発電機室は、湖の水位まで水没し、非現実的な光景が広がっています。鏡面になっていてさらに幻想的。

波があっても美しいですが、鏡面は特別美しいですね。

いがんでない綺麗な鏡面をずっと見ているとパラレルワールドに吸い込まれそうな感じがしました。

ここは僕が最も好きと言える廃墟です。うっすら水に沈んだ部分が、透けて見えていて幻想的な光景がなんとも言えない感動を与えてくれます。

この建物は歴史的建造物でもなければ、記念物でもないただのコンクリートの発電所跡になぜこんなにも心惹かれるのでしょうか。

それは見えないからこそ広がるイマジネーションがそこにあるからだと思います。

僕にとって廃墟とはジグソーパズルの断片です。

その断片から想像できるもの、それはその建物の起源や、用途、終焉などの真実の一部であり、それらはすべて正解の答えでなくてもいいのです。

この廃墟というものがもつ多様な特徴から想像できる答えは無数にあり、そのすべてが僕にとっては正解でありロマンです。

私がこのサイトで紹介している廃墟とは、廃墟としてそこに存在するピース、情報として浮かび上がってくるピースで出来上がった不完全なジグソーパズルであり、空白を埋めるのは私であり皆さんの創造性の中にあるのです。

一箇所、水没箇所を覗ける所があります。

頭を突っ込んでみると、なんとも幻想的な風景が広がっていました。

眺めてたら、魚が泳いできたよ。親子かな?

階段側から撮影。当時、この階段の下はどんな部屋があったんだろう…。

湖が減水すれば、もしかしたら…と思ったのですが、調べてみるとこの湖は一般に大雨干ばつに左右されるダム湖とは違い、池原ダムの水位調整池なので、増えれば減らし、減ったら足しで常に水位は±1.5mを保つのだそうです。

小さな小部屋にさらに上にのぼる階段がありました。

水位が高い時は船ごと室内に入る事もできます。

水位が低ければ歩いてじゃぶじゃぶと渡ります。

泥が沈殿しているので、滑りやすいので注意が必要でした。

神秘的な階段と窓。

最上階はタービン室を見下ろせます。キラキラと輝く湖面がとてもキレイ。

最上階から入り口の部屋。

再びボートに乗り込み、外から中を撮影。

奥の部屋はさきほど撮影していた部屋。水位が低いと見れるものも多いですが、水位高いときは高い時でこれまた魅力的。

気づくと3時間半も撮影していました。名残惜しいですが、次の予定もあるので帰ります。

ありがとう摺子発電所…、写真で見て一度来たいと思っていましたが、写真で見るよりずっと美しかったし、五感で楽しめる廃墟でした。

感想・まとめ

日本屈指の秘境、水没した建物、廃墟としてもいい年代物といった冒険心をかきたたされる魅力溢れる物件でした。

山奥の湖上というアクセス困難な立地というのは、冒険心を書き立たせるのに必要な条件であり、昭和4~6年建設の建築美とコンクリートの浸食された美しさ。そしてなにより、水没した建物という非現実的で神秘的な光景、下階層の見えない部分への興味。それらが組み合わされ、何とも言えない魅力がある廃墟でした。

この発電所周囲は絶好の釣りスポットで、休日は釣りの方も発電所周囲に良く居られます。湖でのボートのルールはもちろん、釣り人の邪魔にならないようマナーを守って鑑賞してください。また転覆事故も結構あるようですので、行かれる方は気を付けて下さい。

この発電所、実は発電所が綺麗というだけではなく、廃水道がこの裏側の山に眠っており、そちらもとても興味があり内部探検もしてみたいなぁと思ってます。

山と終末旅の管理人について
たむ - tamura -
平成3年生まれ、京都に住んでいます。登山や、夜景、人の少ない観光地へ行って、現実から逃げ、非日常的な体験をする事が好きです。

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