古都コトイメージSmart

2016.11.20

旧和賀川水力発電所 – 発電所廃墟の最高峰!せせらぎの大神殿

和賀川水力発電所の内部

廃墟の情報

旧和賀川水力発電所
廃墟発電所
場所 岩手県
建築 1940
廃墟化 1964


廢墟レポート vol.56:旧和賀川水力発電所 Wagakawa Power station

 今回我々が行ってきたのは岩手県北上市に存在する旧和賀川水力発電所という所です。

 この発電所、山と川に挟まれた場所に建っており、アクセスが非常に難しいと言われております。当初あった道は土砂崩れで無くなっているそうで、色々なサイトさんを参考にさせてもらったのですが、過程が省かれてる事が多く行き方がよく分からなかった為、行く前に上にある計画地図を作成して挑みました。

 一つ目のルートは駐車場所から線を進み廃橋を渡って直登する直登ルート。等高線みてもらえばわかるとおりかなりの急登だろう思ったので、当日が雨という事もあり6爪アイゼンを用意しておきました。円形の建物(サージタンク)も行く予定なので、このルートを第一候補としました。

 二つ目のルートは同じく廃橋を渡って、少し上昇し南方にトラバースするルート。これは途中、傾斜のある水路を横断する必要があり、足がかかる部分があるのか問題でした。

 三つ目のルートは駐車場から出発し、石碑の所から道のない尾根を下りて川岸に。そこから渡渉するというルート。最短で一番アクセスが楽だが川の水量によっては断念しなければなりません。またこの時期の東北の川なので相当冷たいだろうという事で川釣りで使っているウェーダーを持って行く事にしました。

 四つめのルートは渡渉ルート2は、行きしなの高速で参考に見ていたサイトで立ち入り禁止であるという記事を発見し、最初から没案となりました。

 そして当日、あいにくの雨ですが憧れの発電所廃墟を前にテンションはマックス。

 前日に新幹線で仙台入りし、化女沼レジャーランドの一般公開に参加した後なので気分も高まっています。長者原SICから東北道にのり、秋田道の北上西で降りて周辺の様子を確認。市内のマース北上(スパ銭)に宿泊し翌日にアタックしました。マース北上がこれまたいいスーパー銭湯で、ベッドまであって快眠でした。

 写真のこの橋跡をくぐって先へ進む。

 少し進むと水上と書かれた石碑を発見。この石碑が目印でこの石碑の右側を下ると橋方面、左は川岸に下りるルート(正確にはルートではない)になっています。

 第一候補の直登ルートで行く為、まずは橋までたどり着きましたが…高所恐怖症の僕には結構キツイ…。

 きえええ~~。ここで水量の確認。雨が降っていますが、水量は多くなく最悪渡渉でもいけるなーという感じでした。

 同行者権蔵さんが渡ってる様子。緊張してるのがジワジワと伝わります。

 しかし!ここで問題発生。雨が大粒となり、レインウェアは着ていたものの滑落しては危険なので一度車に戻り、雨の様子を伺う事に…またあの橋渡るのか…。

 結果、尾根を下って川岸まで降りてきました。橋の件はわざわざ載せる必要もなかったですが、苦痛な思いしながらあんな所渡ったよというのを見てほしかったので笑

 この下りもかなり急で危なかったです。登山靴でなければ滑落していたかもしれません。

 降りてきたら目の前に発電所が見えて興奮!

 この深さならウェーダー使わんでええな!という事でズボンを脱いでパンツ姿でずぼずぼ。膝下くらいまでの深さで簡単に渡れました。

 跡は川に沿って発電所まで歩けば…

 ドーン!旧和賀川発電所に到着。予定緻密に組んでいましたが、なんやかんやで車から10分ない位ですんなり来れました。

 中へ入ってみると…なんて美しい事でしょう…まるで神殿のような神聖な雰囲気が漂っています。

 この旧和賀川発電所は1940年(昭和15年)に上流にかつて存在した大荒沢ダム(現在は水位低下時のみ出現する廃墟)の発電所と共に建設されたもので、鉱山都市として栄えたこの地の、主に工場の電力供給の為に利用されていました。1940年から湯田ダムが竣工した1964年までの間稼働していました。

 稼働停止から50年を超え、建物は川と山に囲まれた僻地に取り残され、人々に忘れ去られ森に飲み込まれています。

 

 高さがあり大きな窓が特徴的なタービン室

 部屋の中央部に2箇所、大きな穴が開いています。これは下の

 直径は5mほどあるでしょうか。かなり大きな穴です。

 タービン室の横の部屋。

 滴り落ちる水が結晶化して、鍾乳石みたいになってる。

 発電所内は残留物がほとんどありませんが、唯一残っているものがこれ。変電装置の跡で碍子だけが残っています。

 この部分がとても神秘的でした。

 この計器か何かが置かれていただろう装置の跡がとても印象的でした。

 何か資料の一枚や二枚が落ちていればよかったのですが、中にはほぼ残っているものはありませんでした。

 この計器類が置かれていたであろう場所は、二階と繋がっています。

 階段の雰囲気もなかなかいい感じ。

 階段で二階に上がると…

 同じような空間が。

 二階もところどころに穴が開いていて、下を確認しながら歩かないと危険です。

 小さなテラス(?)からタービン室を眺めるコトが出来ます。

 言葉が出ませんね…すごい!の一言。

 一番奥の部屋。やはり洋風な感じでした。

 一番奥の部屋の外からハシゴを伝って屋上に出るコトができます。屋上は二段になっていて、下の段からは…

 このようにタービン室の最上部に行くことができます…。高所恐怖症の人にはたまらん怖さです。怖くて行こうか迷いました。

 ちょっと手を伸ばして撮影。う~むこれでもいい写真ですが…

 がんばりましたが、この先が行けない…しかしいかねば!せめてもの心のより処として、スリングで簡易ハーネス作って、短く切ってあったザイルで窓枠と開閉器具に結びつける。

 錆びた窓にこんなん着けても、万が一滑落すれば意味ないやろなぁと思いつつも、以外と心が休まってひょいひょい行けました。自分を洗脳成功です。

 これは素晴らしい!

 アーチ状になった天井の軸と窓の開放感とこの部屋の広さ、巨大なタービンの穴、どれをとっても今までみてきた発電所より素晴らしかったです。

 今時分がどんな場所に居るのかも忘れ、この周辺で30分ほど撮影していました。

 こういうのは新緑のほうがいい写真撮れるのかなと思いましたが、秋は秋でオレンジ色がステンドグラスのような美しさでした。

 写真で見るより高度感があるので、今思えばよくこんな所行ったなと感じます。

 これを一周した人もいるというのだから凄いw

 屋上の次は地下に降りてみます。

 中は機械室でしょうか。

 大きな鍵穴のようなタービン穴が特徴的です。

 ぶっとい送水管。

 外へ出てサージタンクへ向かいます。

 発電所北の急な斜面を登っていきます。急に見えますが道もありすんなり歩けます。

 コンクリートの建物を発見。

 大きな穴が二つ…。

 中へ入ってみると、少しの水がちょろちょろ流れていました。稼働当時はこの管を毎秒何トンもの水が流れていたんでしょうね。

 二本ある穴はすぐ先で一本になっており、少しすすんで帰ってくと…きれいなシンメトリーに気づいて撮影。この写真よく見ますね。

 ちなみにこの穴は、この先にあるサージタンクの底につながっているものです。

 同行者とフュージョンしてみました。

 この廃墟群でめずらしいブロックアート。

 やっとのおもいでたどり着いたサージタンク。サージタンクとは、発電所タービンなどが急停止した際に生じる圧力の変化による負担を軽減する為の施設だそうです。

 中は…。これまた高所恐怖症にはきつい!!しかも歩く部分が、非常に薄っぺらいのがまた怖さを引き立てます。

 底は16mほどあり、高度感がハンパではありません。

 どこかのブログでここ渡ってる人がいましたが、ほんまにすごいなぁ…今考えても背中からブルっと寒気するほど怖かったです。

 最後に発電所に戻って記念撮影。撮り忘れた所を撮影してかえりました。

感想・まとめ

 和賀川の上流は豪雪地帯で、雪解け水などで年中水が豊かであることから和賀川水力発電所が作られました。昭和15年に建築され、わずか24年という短い期間で役目を終えてしまいました。理由は湯田ダムの建設でした。以降、50年以上にわたり放置され、今では廃墟マニアの魅惑のスポットとして知られるようになりました。廃墟の中でも発電所というジャンルの中ではトップクラスの美しさを誇ります。

 この廃墟は有名である割に人為的な破壊が少なく、落書きなどもほとんどないのはやはりアクセスが困難であるからです。ページ最初に説明したとおり、山から行くルートでも川ルートでも安全なルートはありません。行かれる方はきっちりと準備をしてくださいね。

山と終末旅の管理人について
たむ - tamura -
平成3年生まれ、京都に住んでいます。登山や、夜景、人の少ない観光地へ行って、現実から逃げ、非日常的な体験をする事が好きです。

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