ヤマビル対策と噛まれた時の対処
ヤマビルとは
梅雨や初夏などは本格的にヒルが活動する時期です。
ヒルというのは人間などの大型哺乳類に引っ付き吸血するぬめぬめとした吸盤のある虫の事。尺取虫のように移動し、体温や二酸化炭素、振動などに反応し吸盤で人の靴から這い登って吸血する。見た目や動き方、血を吸う事、ぬめぬめしている事などから非常に不快に感じる生物として知られています。
大きさは2~3cmで体は伸び縮みし、伸びた時は倍ほどの長さにもなります。吸血は産卵の為に行われ、吸血を終えた親ヒルは約一か月で産卵します。
山登りに長けている人などは「ヒルが怖くて山登れるか!」というような人も確かにいますが、現代人の多くにとっては気持ち悪い、気色悪い、ゾっとする生き物である事に間違いありません。
山ヒルの生息場所
もともとは山奥に生息し、シカやイノシシなどの血を吸っていたそうですが、森林伐採開発などで餌を求めたシカ等が分布拡大したことで、山ビルの分布も日本全土(秋田から沖縄まで)までに拡大しました。
主に山ビルが出る事で知られているのは、関東では丹沢山地、関西・中部では鈴鹿山脈が有名です。生息数が多いところでは人を感知し、木の葉から降ってきて頭皮から吸血なんて事もあります。特に沢筋や谷などでは高確率で遭遇します。
・和歌山:紀伊山地
・京都:丹波山地
・滋賀:比良山地西部
・奈良・和歌山:台高山脈
・岐阜:養老山地
これらの山などでもヒルが出ると知られています。
ヤマビルの被害にあわない為に
ヤマビルにあわない為にはなんたって、雨の日や雨上がりの湿った時に山へ入らない事がベストです。
ヒルは乾燥に弱く、湿気のある環境でなければ活動できません。山の中でも日の当たる尾根道などより沢筋などに多く潜んでいます。ふと休憩した岩場や椅子、注意が必要です。
ヒルは人工物の影や岩の影などによくいる為、もしそこがヒルの生息地であったならばあなたの腰からヒルは上がってきて背中やお腹から血を吸われる事になります。ヒルはどこに居ても気持ち悪いですが、足よりお腹や背中、肩、腕なんか精神的にキッツイですからね。
血を吸う前のヒルは細長く、靴やズボンの中や、靴とスパッツの隙間などの小さな隙間などからも侵入します。その為スパッツを利用した対策を行う場合は注意が必要です。
ヒルは塩水・虫よけ等の忌避剤が効果あるのでヒルが入りこみそうな隙間や、靴の中・スパッツの裏側に虫よけや塩水・忌避剤をかけておく等の工夫が必要です。スパッツはあらかじめ塩水に浸しておき、乾かした物を使うと隙間なく対策できます。もちろんその効果はメーカーや歩き方・歩く場所により持続性は異なる為こまめにスプレーはかけなおさなければなりません。効き目の弱い虫よけや、対策の際に虫よけがかかっていない部位があればそこから登ってくる可能性もあります。
対策はこまめに・丁寧に徹底しなければ安心できません。
沢沿いを歩いていると、塩や忌避剤の効き目が知らず知らずのうちに薄れて来ることもあるでしょう。服装対策では足元は長ズボンに長めの靴下を使用し、靴下の中にズボンのすそを入れてしまい、足首に塩水を含ましたタオルを巻く等も効果があるそうです。
また、ヒルの出る山域に行く場合はヒルに噛まれていないか足元に神経を研ぎ澄ませなければなりません。事あるごとに足元を見て確認。ヒルは吸われている事に気づかないと色々な記事で見ますが、神経を集中させれば噛まれる時チクっとして痛みを感じる事もよくあります。
ヒルが人間を感知してから襲うまで少しのラグがあります。先頭の人より二番目、三番目、四番目(それ以降はまた確率が下がっていく)に歩いてる人のほうがヒルに吸われる確率が上がります。すなわち、この時期やけに先頭を歩きたがる人は、自分勝手であり、他人を思いやる気持ちが欠けているとしか思えません!そんな優しい先輩のせいで何度も世の役に立たない献血をしました(怒)。そういった人はいざというときも助けてくれないので信用できないことを覚えておきましょう!笑
ヒル被害に遭わない為にする事
1、忌避剤や塩を靴に塗っておく。
2、複数人で山に入りお互いこまめにチェックする。
3、ズボンの裾を靴下の中へ入れる
4、分厚い靴下をはき、靴の中で噛まれないようにする。
5、つばの長いハットをかぶる
6、谷より尾根の登山道を選ぶ
7、同じ場所に長時間立ち止まる時は四方に塩を散布する。
ヒル被害に遭わない為にしてはいけない事
2、雨の日、雨上がりに山へ行かない
3、生息域をあるく際は立ち止まったり、ゆっくり歩かない(団体で歩く場合行列後半は危険)
4、休憩は木陰や湿った所でしない。
5、素足で歩いたり、半ズボンで歩かない。
6、網目のあらい軍手や薄手の靴下などを使用しない。
7、忌避剤を直接肌には塗らない(服の上から)
ヤマビルに血を吸われてしまったら
「キャッ!!」この時期に山で悲鳴が聞こえる事があります。ヒルに襲われ慣れてない方はビクっとするかもしれません。
まず頭に入れておいてほしいのは、ヤマビルは毒や、病気を移す事はなく無害だという事。むしろ昔はあえてヒルに血を吸わせるヒル療法というものまで存在しました。
ただし、無害だから安心だといえ、吸われた時の対処法やしてはいけない事などがあります。まずはヒルは血を吸って自信の何倍に大きくなった体を支える為の強力な吸引力を持っています。一度吸い付いてしまうと自分の体がちぎれても吸い付く奴もいます。むやみに引きちぎったりすると傷跡が残ったり、焦って取ろうとしてなかなか取れずなんどもヌルヌルと引っ張らなければいけなかったり、その後の処理が気持ち悪くなるのでやってはいけません。
吸い付いたヒルを除去するにはピンセットでヒルを軽くつまみ、消毒用アルコールや塩、忌避剤等をさっとかけてやるだけでコロっと取れます。
そんなもの持ってないよ~!という人はアルコール系のウェットティッシュなどでもOKです。また、無理やり手でひぱって取ってもいうほど酷いキズにはならないので最終手段手で手で吸盤を爪で剥ぎ取るようにしてヒルを皮膚からとります。
取れたヒルはピンセットでつまんだままハサミがあれば切って殺す、塩・エタノールをかける、ない場合は地面や岩の上に置き、石ころなどで滅多打ち・八つ裂きにして葬りあそばせましょう。
逃がしてしまうとたらふく血を吸ったヒルは産卵しますのでヒルを増加させてしまいます。たかだか一匹逃しただけで増える量なんてしれてる!という人もいますが、ヒルは天敵が居ません(ヒルを捕食する動物は居ない)。さらなる被害を防ぐためにも、血を吸ったヒルは殺しておきましょう。
ヒルが取れたあとの皮膚ですが、噛まれた際にヒルジンと呼ばれる成分を注入します。ヒルジンに含まれるポリペプチドが血を凝固促進させるトロンビンという物質の働きを阻害し、血の凝固作用が消失します。その結果最悪何時間も血が止まらないという症状が引き起こされます。
いくらヒルが無毒とはいえ、地を這って生きてる生物なので雑菌などは含まれます。まず噛まれたらアルコール系のウェットテッシュなどで傷口を拭いて、さらにつねって血を押し出し、注入されたヒルジンを出来るだけ無理のないように外へ出し、腫れやかゆみを抑えます。最後にまた綺麗に拭き取り(水があれば水で洗う)ムヒなどの抗ヒスタミン剤を塗り絆創膏やガーゼ等を張っておきます。
個人差がありますが血がなかなか止まらない事もあります。ただ致死量には遠く値しない量なので何時間血が止まらなくからと心配する事はありません。
ヒルに噛まれたらする事
②患部を綺麗に消毒し、抗ヒスタミン剤を塗布する。
③ヒルが出る時期・場所に行く時は消毒用エタノールを持っていく(皮膚の消毒も殺蛭もできる)
④血を吸ったヒルは殺すようにしましょう。
ヒルに噛まれたらしてはいけない事
②火で蛭処理する場合は服装などに注意(Gore-Texは可燃性)
③消毒用アンモニアは患部が悪化するので絶対に使用しない。(キンカン等)
持っていた方がいい物
まず消毒用エタノール。ひる下がりのジョニー等の避ヒル剤は結構高いですが、消毒用エタノールは100円ほどで購入できヒルを落とすに十分の効果があります。
エタノールは購入した容器から小型のスプレー容器(化粧品用)などに移し替えヒルに直接噴射しやすいようにしましょう。またアルコール性のウェットティッシュを持ち歩けばヒルがついた時、ウェットティッシュごしにヒルをつまめばさらっと取れます。
ヒルをとった後、出血の度合いにより絆創膏もしくはガーゼを使用します。ガーゼはそれを固定出来るテープも必要です。ガーゼ、絆創膏を使用する前に患部をつつねってヒルの出した成分ヒルジンを出し綺麗に清潔な布等で拭き、ムヒ等の抗ヒスタミンの入っているものを塗ります。写真のような直接幹部に塗るタイプの場合は他人に使いまわしできないので軟膏のタイプの方がいいかもしれません。
ただ気持ち悪いというだけで血を吸われる事以外は無毒なので、必要以上に怖がる必要はありません。ヤマビルが出るような場所に行くならそれなりの格好を。完全防備でも隙をついてヒルは血を吸いにやってくるので吸われるときは吸われるのです。どうしてもヒルに献血したくないという方はヒルの出没が報告されていない山域に行くことをお勧めします。